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ITG-TEM乱流が駆動する電子・イオン間のエネルギー交換

核融合科学研究所の連携大学院生で複合大域シミュレーションユニットのメンバーである東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻博士課程3年生の加藤鉄志さんらが「ITG-TEM乱流が駆動する電子・イオン間のエネルギー交換」についての研究成果をまとめ、その論文が「Physics of Plasmas」の2025年12月号に掲載されました。さらに、本論文はFeatured Articleに選ばれました。

【論文概要】

  本研究では、捕捉電子モード(TEM)乱流および イオン温度勾配(ITG)–TEM混合乱流における電子・イオン間のエネルギー交換を、ジャイロ運動論シミュレーションを用いて調査した。TEM 乱流におけるエネルギー交換は、主として磁力線垂直方向のgrad-B・曲率ドリフトに伴う電子の冷却と、磁力線に沿った平行運動に伴うイオンの加熱から構成される。そのため、TEM 乱流ではエネルギーは電子からイオンへ流れ、これは ITG 乱流で見られるエネルギー移送とは逆方向である。

  ITG–TEM 混合乱流では、各粒子種における平行加熱および垂直冷却の相対的な大きさが、エネルギー交換の方向と強さを決定する。またエントロピー収支の観点から、粒子・熱輸送フラックスによってより大きなエントロピー生成を持つ粒子種から、他方の粒子種へエネルギーが流れることが確認された。

  さらに、ITG–TEM 乱流における乱流エネルギー交換の準線形モデルによる予測可能性を評価するとともに、エネルギー輸送フラックスと電子・イオン間のエネルギー交換の相関に基づく代替的手法を構築し、その有効性を示した。

  本研究は核融合科学研究所のプラズマシミュレータ雷神を使用して行われた。

図:電子とイオン温度勾配を変化させた時の乱流エネルギー交換。青四角が非線形計算で得られた電子・イオン間の乱流エネルギー交換、丸が準線形モデル(飽和則は非線形計算結果を使用)で予測した乱流エネルギー交換の予測結果、緑四角は非線形計算で得られた(電子とイオンの乱流エネルギー輸送フラックスの差)/(大半径)の計算結果、および三角は準線形モデルで予測した乱流エネルギー輸送フラックスを用いて(電子とイオンの乱流エネルギー輸送フラックスの差)/(大半径)を計算した結果をそれぞれ示している。

【論文情報】

  T. Kato, H. Sugama, and T.-H. Watanabe, “Energy exchange between electrons and ions driven by ITG-TEM turbulence,” Phys. Plasmas 32, 122303 (2025).

  DOI: 10.1063/5.0291372