研究発表
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ASDEX-Upgrade トカマクにおけるアルヴェン不安定性による高エネルギー粒子駆動測地音響モードの非線形励起
核融合科学研究所 複合大域シミュレーションユニットのワンハオ助教らが、「ASDEX-Upgrade トカマクにおけるアルヴェン不安定性による高エネルギー粒子駆動測地音響モードの非線形励起」についての研究成果をまとめ、その論文が「Nuclear Fusion」の2024年5月号に掲載されました。
【論文概要】
高エネルギー粒子が駆動する磁気流体不安定性には、アルヴェン波不安定性や高エネルギー粒子駆動測地音響モード(EGAM)不安定性など、励起される波によって異なる複数のタイプがある。最近、ASDEX-Upgrade トカマクの実験で、アルヴェン不安定性とEGAM不安定性という、複数タイプの不安定性の共存が観測された。高エネルギー粒子と磁気流体との相互作用を計算できるMEGA コードを使用したハイブリッドシミュレーションを実行して、これらの不安定性の特性を調べた。初期にEGAM は成長しないが、アルヴェン波の成長とともに徐々に帯状流が発生すると、EGAM が励起され、その振幅は最終的にアルヴェン波の振幅を超える。このような非線形励起のEGAMは、従来研究されてきた線形励起のEGAMとは大きく異なる特性を持つことが分かった。線形励起EGAMでは、通常の測地線音響モードよりも高い周波数となるが、それは高エネルギー粒子分布がバンプオンテールという形状の場合のみである。それに対し、非線形励起EGAMでは、高エネルギー粒子分布がスローイングダウンという形状の場合でも高い周波数が得られる。この興味深い違いが生じる理由は、EGAMが非線形励起される時には、先に成長したアルヴェン不安定性により高エネルギー粒子分布が初期分布から変化しているためである。このように、アルヴェン不安定性に起因する高エネルギー粒子の分布関数の変化が、EGAMの特性に重要な影響を与えることを明らかにした。
本研究は、核融合科学研究所のプラズマシミュレータ雷神、 国際核融合エネルギー研究センターのJFRS-1、理化学研究所の富岳を使用して行われました。
【論文情報】