研究発表
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高速イオン質量が波動不安定性の非線形発展に及ぼす影響を解析
複合大域シミュレーションユニットの核融合科学研究所・樋田美栄子教授と京都大学・小谷翼助教の研究成果をまとめた論文「低域混成波不安定性の非線形発展における高速イオン質量依存性のシミュレーション研究」が、「Physics of Plasmas」に2024年12月24日に掲載されました。
【論文概要】
核融合プラズマにおける高速中性粒子入射や宇宙プラズマにおける無衝突衝撃波よる粒子加速などによって、磁場に垂直方向の速度空間の分布がリング状となるような高速イオンが生成される。このような高速イオンは質量が異なる様々なイオン種で存在する。本研究では、高速イオンが引き起こす低域混成波不安定性の非線形発展が、高速イオンの質量にどのように依存するかを、電磁粒子シミュレーションを使って解析した。宇宙と核融合のプラズマに共通である、高速イオンが生成され続けるという状況を設定してシミュレーションを行った。その結果、高速イオン質量が大きいほど、低域混成波の初期成長はゆっくりであるが、長時間にわたって波は成長を続け、最終的には大振幅となることが明らかとなった。また、この非線形発展は、不安定波と新たな粒子の注入効果によって決まる、高速イオンの速度分布関数の傾きに関係していることも分かった。さらに、高速イオン質量が大きいほど、背景の熱イオンのエネルギーが顕著に増加すること、波動間非線形相互作用によって生成される低域混成波の高調波も大振幅となることを示した。
本研究は、核融合科学研究所のプラズマシミュレータ雷神を使用して行われました。
【論文情報】
DOI: 10.1063/5.0238485