ユニット体制による学際的共同研究の推進

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核融合の「未解決問題」を「学際的に定式化」し「学際的な共同研究体制」を構築して取り組む

ユニット名研究テーマ
メタ階層ダイナミクス
Meta-hierarchy Dynamics
ダイナミクス・時空核融合プラズマを高性能化する鍵は、自発的に生まれてくる様々なスケールを持つ揺らぎや構造を制御することである。そのためには、ミクロとマクロが連関する複雑現象を表現する物理モデルを構築し、そこに内在する普遍的メカニズムを解明する必要がある。既定の階層分離を前提としないメタ的な視点からダイナミクスを捉え直し、生体や経済システムなど他の複雑系との類似性と相違を明らかにすることで、核融合科学から集団現象の科学に新しい学理を確立する。
構造形成・持続性
Structure Formation and Sustainability
システム核融合炉の高効率化・小型化を目指す研究において、プラズマの閉じ込め改善と定常化が中心的な課題である。その鍵となるのが、プラズマが自発的に内部構造を形成し、維持しようとするメカニズムを理解することである。我々は、対称性やエントロピーといった物理学の根本的な概念を再検討することで、構造形成の原理を解明する。それに基づいて、高性能の閉じ込め配位を探求する。プラズマの構造形成は、磁気圏や降着円盤などの天体にも共通する現象であり、宇宙を理解する基本的な学理となる。
位相空間乱流
Phase Space Turbulence
揺らぎ・乱流・輸送経済性の高い核融合炉を実現するため、炉心プラズマの高性能化が求められる。プラズマの性能を決定する要因の一つが、乱流によるプラズマ熱伝導・輸送である。我々は、プラズマを構成する粒子の運動の多様性に注目し、粒子集団が創発する揺らぎ(ミクロ集団現象)と乱流輸送のメカニズムを解明する。ミクロ集団現象の物理は、核融合イノベーションの指導原理となると同時に、宇宙・天体など他のプラズマ現象に通底する、非平衡・非線形物理の根本的な学理となる。
プラズマ量子プロセス
Plasma Quantum Processes
素過程・相互作用核融合システムの中では、内部自由度を持たない粒子たちの集団運動モデルでは記述できない様々な物理現象が起こり、核融合炉の性能を決める大きな要因となる。我々は、粒子内の電子状態の変化や電磁波との相互作用、あるいはスピン等の効果を支配する量子プロセスを正確に扱うことで、非平衡プラズマや高密度プラズマの物理モデルの構築を目指す。この問題は、天体・宇宙プラズマ物理、さらには原子核物理にも共通する普遍的な課題であり、プラズマ量子プロセスの新たな展開をもたらす。
プラズマ・複相間輸送
Transports in Plasma Multi-phase Matter System
異相連成現象核融合炉では、ダイバータへの強大な熱・粒子負荷が大きな問題となる。我々は、極限的条件下の物理機構に分け入り、プラズマと、物質の気相・固相・液相という異相間の相互作用を研究する。環状および直線型プラズマ装置による実験と計算機シミュレーションを用いて、複雑な輸送現象を解明し、核融合炉の成立条件を明らかにする。プラズマと異相間の相互作用の研究は、宇宙におけるプラズマと物質の相互作用研究などにも共通するものであり、生命の素となる物質創成の物理・化学過程の解明にもつながる。
可知化センシング
S&I: Sensing and Intellectualizing Technology
計測・データ超高温プラズマの挙動を観測し、予測し、制御することは、核融合炉の高性能化に必須の課題である。我々は、飛躍的に高精度なプラズマ計測法を開発し、プラズマをホリスティックかつ精密に観測できるシステムを構築する。さらに、データサイエンスを駆使して解析し、視覚・聴覚・触覚などの情報へと変換して「可知化」する。計測・データ解析・表現手法を専門とする研究者らが一丸となって知的探究プロセスを体系化するこの取り組みは、核融合科学にとどまらず、多くの科学分野における現象理解に革新をもたらす。
プラズマ装置学
Plasma Apparatus
装置学・技術核融合研究のゲームチェンジャとなる破壊的イノベーションの重要性が指摘されている。そのためには、プラズマの複雑な集団現象に関する学理を深化させることで、革新的なプラズマ技術を生み出す挑戦が必要である。核融合炉心に限らず、プラズマの斬新な応用を作業仮説にすることで、他分野との連携・融合を進め、集団現象の未解明な創発性に光を当てる。プラズマ装置学のイノベーションは、様々な自然科学研究と科学技術の新しい地平を拓く。
複合大域シミュレーション
Complex Global Simulation
計算科学核融合プラズマの内部で起こる複雑現象を解明するために、シミュレーション研究が重要な役割を果たす。超高温プラズマでは、ミクロな粒子運動からマクロな揺らぎが創発される。我々は、多階層を連結する計算手法やデータ科学を活用する計算手法を独創的なアイディアで開発し、プラズマ全体のシミュレーションを実現することで、核融合燃焼プラズマの正確な予測を目指す。この手法は宇宙・天体プラズマにも適用可能であり、シミュレーション科学の新たな展望を開く。
超高流束協奏材料
Ultrahigh-flux Concerting Materials
材料学強力な粒子線と熱に曝されること(超高流束)による材料の劣化は核融合炉のアキレス腱となり得る。炉材料の耐性向上という核融合の核心課題を解決するには、材料変質に関わる物性物理の深い理解と制御技術が必要である。我々は、変質を抑えるという従来の発想を転換し、負荷が大きいからこそ発現する強化・機能因子を「適応」と捉え、自ら変化して超高流束と協奏する材料の創製を目指す。このアプローチは、過酷環境が避けられない原子力、宇宙、航空、化学プラント材料にも革新をもたらす。
超伝導・低温工学
Applied Superconductivity and Cryogenics
低温超伝導と低温の技術におけるイノベーションは、核融合研究のゲームチェンジャーとなる大きな可能性をもっている。我々は、高温超伝導などの先進的な超伝導材料を核融合炉用のマグネットとして実用化するため、線材化・大電流導体化の技術や、安定的に強磁場を発生できるコイルシステム技術、水素を用いる経済的な冷凍技術、また水素の生産・利用に関する基礎技術の研究を推進する。超伝導や水素利用の技術革新は、カーボンニュートラルでエネルギー持続可能な新たな社会環境の実現に広く貢献する。