超伝導・低温工学
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助教成嶋 吉朗

orcid researchmap KAKEN
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  • 研究内容

    プラズマ物理学と高温超伝導マグネット開発のシナジー効果を追求した研究

    【プラズマ物理学】

    磁場閉じ込め磁場配位に共鳴成分を有する摂動磁場を印加すると、磁気島と呼ばれる構造が出現する。LHDでは、プラズマ放電中にこの磁気島が自発的に消失したり、逆に拡大したりする現象が観測されている。それだけでなく、磁気島の位相がずれた状態で維持される現象も観測されている。磁気島の能動的制御によってプラズマの閉じ込め特性やMHD特性を向上できる可能性があるため、磁気島のダイナミクスを支配する条件を探し出すことは重要である。これらの磁気島のダイナミクスは、プラズマのフローと密接に関連し、また、ダイバータとの非接触/接触遷移現象とも相関関係が見られている。これらの発見は、閉じ込め磁場構造に研究に基づいたプラズマ物理の解明に貢献している。

    【高温超伝導マグネット】

    高温超伝導は低温超伝導に比べてより高い温度、高い磁場環境の下で動作する特徴を持つ。特に高磁場が核融合出力に大きく寄与する磁場閉じ込め核融合炉のマグネットにHTSを採用することは大きなアドバンテージをもたらす。一方で、解決すべき課題が多くあることも事実である。その一つに、高温超伝導線材で形成できるマグネット形状に制限があることが挙げられる。一般にREBCO高温超伝導線材は紐状の導線と大きく異なり、平坦なテープ形状をしていることから、その曲げ方向に非等方性がある。積層されたテープ線材をエポキシ樹脂などで含浸した後に巻き線すると、曲率半径に応じた圧縮/引っ張り歪みが原理的に生ずる。また、特にエッジ方向の歪みについては尤度が低く、曲げについては制限が高いと言える。そのほかにも交流電流を通電した際の各テープごとのインダクタンスの差による電流の非対称性や、循環電流の発生などについて、抑制する必要があるなど、解決すべき課題は少なくない。

    【シナジー効果】

    核融合炉のマグネットを高温超伝導導体で製作することは、非常に挑戦的かつ革新的なアイディアである。このアイディアを実現させるためには解決すべき多くの研究課題が存在する。限られた研究リソースの中で、プラズマの高性能化を追求するための装置の改造や改良は別として、不具合修正的な追加改造は極力避けるべきである。つまり、装置設計においては、プラズマ実験で得られる実際のプラズマ性能をある程度予測し理解した上で設計することが重要である。実際のマグネット形状は理想的にはならず、コイルの製作時の公差や設置誤差、超伝導線材同士の接続構造、電流供給部の構造、巻線構造、超伝導線材自体による磁化(磁気遮蔽電流)、装置周りにわずかに存在する磁性体、他に由来する誤差磁場の存在は磁場配位に影響を及ぼす。また、超伝導導体で形成できるマグネット形状自体にも制限がある。

    これらの課題は、超伝導工学研究の領域だけで解決できる問題ばかりではなく、実際に生成される磁場閉じ込めプラズマの特性を同時に理解したうえで我々が克服すべきものである。核融合炉の早期実現によるエネルギー供給に向けて、このアイディアを具現化させるために効率の良い研究を進める必要がある。

論文リスト