複合大域シミュレーション
Complex Global Simulation
  • 1.ユニットの目的

     地球規模の気候変動のような大域的な自然現象では、大気汚染や太陽活動といった様々な時空間スケールをもつ個々の物理過程が、相互に影響を及ぼしあって現れています。核融合プラズマもそういった複合大域現象の典型例のひとつです。プラズマの個々の粒子(イオンと電子)という微視的階層とプラズマ全体の大域的階層とが相互作用しています。そして、それらの時空間スケールは極端に異なります。複合大域現象は、核融合だけではなく様々な学術分野において、とても重要な課題となっています。
     このような特徴をもつ複合大域現象を理解するには、階層間の相互作用を考慮した「複合大域シミュレーション」が必要です。ところが、その実現は容易ではありません。なぜなら、階層間の時間空間スケールが極端に異なる場合、単一の基礎物理方程式に基づいたシミュレーションにその全スケールを取り込もうとすると、計算機の規模‧能力が不足するからです。これは、今後、スーパーコンピュータの性能がいくら向上しても解決できる問題ではありません。問題解決には、階層間や異なる物理モデル間を連結する新たな手法の開発が必要なのです。
     複合大域シミュレーションユニットでは、この手法開発によって、微視的階層との相互作用を正しく取り入れた複合大域シミュレーションを実現し、シミュレーション研究を推進しています。

  • 2.ユニットの目標

     以下の2つを中核目標として設定しています。

    1)炉心プラズマと周辺プラズマを包含する磁場閉じ込め核融合プラズマ全体の大域的シミュレーションの実現

    2)スーパーコンピュータの規模による制限を超え、実現象に近いシミュレーションを実現するための広範な応用性をもつ方法論の確立

  • 核燃焼プラズマの階層性

     将来の核融合炉では、核融合反応によって発生する高速アルファ粒子がプラズマを加熱して、核融合反応に必要な1億度以上というプラズマの高温状態を維持します。(これを核燃焼プラズマと呼びます。)ところが、プラズマ中には、温度勾配等によって大小さまざまな揺らぎが発生し、また、高速粒子も揺らぎを引き起こします。揺らぎが発達すると乱流状態となり、そこから帯状流が生成されます。このような揺らぎや流れが、プラズマの粒子や熱の閉じ込めに影響を及ぼします。
     本ユニットでは、高速粒子、イオン、巨視的揺らぎ(磁気流体的揺らぎ)、微視的乱流と帯状流、という異なる階層の相互作用を正しく取り入れた計算手法を開発し、核融合プラズマ全体の大域的シミュレーションを実現します。これにより、核融合プラズマの未解決問題の解明、挙動予測を行います。また、開発した計算手法を、高速粒子が普遍的に存在している宇宙天体プラズマにも応用します。

  • 散逸系乱流現象の階層性

    (事例:Hall MHD Q値)

     乱流は、様々な分野(流体力学、気象、航空、宇宙、核融合、超流動、化学反応など)のキーワードとなっています。多くの場合、乱流現象は散逸のある偏微分方程式で記述されます。乱流は、スケール階層性と散逸によって特徴づけられます。微小スケールの階層である散逸領域の計算の精度を上げれば、より現実に近いシミュレーションとなりますが、それは一方で、計算の巨大化を引き起こします。そのため、散逸領域の計算の小型化が求められます。本ユニットでは、散逸領域の構造、階層間相互作用を解明し、モデル化を行います。そして、散逸階層のモデル化とスケール階層性によるモデル化を組み合わせて、実現象に近いコンパクトなシミュレーションを実現します。このモデル化を方法論として確立し、様々な研究分野に展開してゆきます。

研究組織

・ 研究戦略会議メンバー(所外)

研究成果

複合大域シミュレーション

連絡先

Email:cg-sim