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第4回プラズマ装置学ユニットセミナー(5月30日)

第4回プラズマ装置学ユニットセミナーを開催します。現地とオンラインでのハイブリッド開催です。ぜひご参加ください。

【日時】2025年5月30日(金) 14:00-15:30(予定)

【場所】核融合科学研究所 研究Ⅰ期棟5階501セミナー室 および オンライン(Zoom)

【Zoom接続】 https://us06web.zoom.us/j/85364856861(Meeting ID: 853 6485 6861, Passcode: Apparatus)

【講師】 渡辺元太郎 (浙江大学、准教授)

【講演題目】 デコヒーレンスを活用した量子バッテリーの高速充電

【講演概要】 

 量子熱力学は近年急速に発展している分野であり、その中心的な課題の一つに「量子効果を活用した熱デバイスの性能向上」がある。中でも量子バッテリーは、量子系をエネルギーの貯蔵媒体とするデバイスのことで、高速かつ高効率な充電方法の確立が求められている[1]。本講演では、我々の最近の研究成果として、デコヒーレンスを利用した量子バッテリーの高速充電を可能にする普遍的な手法を紹介する[2]。
 デコヒーレンスは、量子系が外部環境との相互作用により量子状態の重ね合わせを失う現象であり、系の量子性を損なうものとして、通常は回避すべき対象とされる。本研究では、この一見不利に見えるデコヒーレンスをむしろ積極的に活用するという発想に基づいている。具体的には、充電過程において、エネルギー供給系(チャージャー)とバッテリーとの間で起こるコヒーレントなエネルギーの振動的交換と、強いデコヒーレンスによってチャージャーのエネルギーが凍結される「量子ゼノ効果」との間にあるトレードオフに着目した。デコヒーレンス強度を適切に調整することで、両者の効果のバランスが取れ、最も効率的なエネルギー転送が実現されることを明らかにした。この原理は特定の系に依存しないため、広範な量子バッテリーに適用可能である。また、デコヒーレンスは、超伝導量子ビットやNMRなど、様々な量子プラットフォームにおいて制御可能であるため、本研究の提案は現行の量子技術で実験的に検証可能である。
本講演では、量子バッテリーの研究背景から出発し、理論的手法の基礎、および本研究の結果とその意義を、量子熱力学を専門としない方に向けて平易に解説する。

[1] F. Campaioli, S. Gherardini, J. Q. Quach, M. Polini, and G. M. Andolina, Rev. Mod. Phys. 96, 031001 (2024).

[2] R. Shastri, C. Jiang, G.-H. Xu, B. P. Venkatesh, and G. Watanabe, npj Quantum Inf. 11, 9 (2025).