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プラズマシミュレータ雷神で地球極域上空の低域混成波高調波構造を再現

 複合大域シミュレーションユニットのメンバーである、京都大学大学院理学研究科の小谷翼研究員と核融合科学研究所の樋田美栄子教授らの研究グループは、地球極域上空における低域混成波の高調波構造をプラズマシミュレータ雷神で再現し、高調波がイオンの加速を促進するという新たな可能性を示しました。

 地球磁気圏の極域からは大量の酸素イオンが宇宙空間へと流出していますが、その理由はよく分かっていません。この謎を解く鍵は、プラズマ波動によるイオンの加速だと考えられています。今回、小谷翼研究員らは、地球極域上空4000km付近において人工衛星で観測されていた、低域混成波とその整数倍の周波数を持つ高調波に注目しました。低域混成波は、その周波数がイオンと電子のサイクロトロン周波数の間にあることから、電子とイオンの両方と相互作用するという特徴があります。そこで、研究グループは、プラズマを構成する電子とイオンの個々の粒子の運動と電磁場の変動を計算する電磁粒子シミュレーションを用い、地球極域上空で高速粒子が連続的に降り注いでいる状況をプラズマシミュレータ雷神で模擬しました。その結果、高速粒子が励起する低域混成波とその高調波の構造を再現することに成功するとともに、多くの高調波が生成されるとイオンがより強く加速されることを示しました。

シミュレーションによって得られた電場の周波数スペクトル(左)とイオンの速度分布(右)。 低域混成共鳴周波数ωLHのほぼ整数倍の周波数を持つ高調波が多数生成され、これらの波によってイオンが強く加速されている。

 本成果をまとめた論文が「Geophysical Research Letters」 に2023年3月2日に掲載されました。

 “Harmonic Structure of Lower Hybrid Waves Driven by Energetic Ions at 4000 km Altitude: PIC Simulation”, Tsubasa Kotani, Mieko. Toida, Toseo Moritaka, and Satoshi Taguchi


DOI:10.1029/2022GL102356


 本研究は、核融合科学研究所のプラズマシミュレータ雷神を利用しました。


 小谷翼さんは、学会ならびに国際会議での本研究に関する発表で、2022年度に以下の賞を受賞しました。