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光渦レーザーと核融合材料との相互作用に関する研究紹介(川口晴生助教らの成果)

 本研究所・可知化センシングユニットの川口晴生助教、上原日和准教授らのレーザー加工に関する最新の研究成果が、米国光学会「Optical Materials Express」誌に掲載されました。ここでは、本成果の内容について紹介します。

 今回、川口助教は、極めて短い時間でパルス状に出力するフェムト秒レーザーを改良し、偏光渦とよばれる偏光分布が渦巻き状の特殊なフェムト秒レーザービームを核融合材料であるタングステンに初めて照射しました。照射後のタングステンの表面形状を詳細に調査した結果、レーザー誘起周期構造(LIPSS; Laser induced periodic surface structure)とよばれるさざ波状の凹凸構造が形成され、その周期構造の向きがビームの偏光状態を反映していることを見出しました(図1)。

 また、川口助教は、ラジアル偏光やアジマス偏光といった代表的な偏光渦のほか、それらの重ね合わせで得られる中間的な偏光渦を照射し、かざぐるま状のLIPSS構造がタングステン表面に形成されることを初めて確認しました(図2の上部)。さらに、この偏光渦ビームを特定の条件で照射することで、特殊ならせん構造・結び目構造の加工ができることを見出しました(図2の下部)。このような対称性の無いトポロジカル構造が形成されるメカニズムは明らかとなっておらず、今後、詳細な解析を進めていきます。核融合分野でとりわけ重要な材料に位置づけられるタングステンを取り扱った本成果は、当該材料の微細加工に関する新たな知見を与え、核融合工学分野への大きな波及効果が期待されます。

 今回紹介した成果は、理化学研究所・光量子工学研究センターの杉岡幸次チームリーダー、名古屋工業大学の宮川鈴衣奈助教との共同研究体制で創出されたものです。可知化センシングユニットでは、この研究をさらに発展させて、特殊な構造をもったプラズマやレーザービームと核融合材料との相互作用に関する研究、光渦や偏光渦レーザーを使ったプラズマ計測などの学際展開を推進していきます。

【論文情報】

Optical Materials Express Vol. 14, Issue 2, pp. 424-434 (2024).

https://doi.org/10.1364/OME.510141

題目: Femtosecond vector vortex laser ablation in tungsten: chiral nano-micro texturing and structuring (フェムト秒光渦レーザーによるタングステン加工: 特徴的な表面ナノ/マイクロ構造の形成)

著者: 川口晴生(核融合研)、安原亮(核融合研)、楊浩天(総研大)、堀千夏(核融合研)、宮川鈴衣奈(名工大)、杉岡幸次(理研)、太田雅人(核融合研)、上原日和(核融合研)

お問い合わせ: 可知化センシングユニット長 uehara.hiyori@nifs.ac.jp