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ヘッドマウントディスプレイシステム用のLHD可視化ソフトウェア「Digital-LHD」の開発(大谷寛明准教授らの成果)
本研究所・可知化センシングユニットの大谷寛明准教授は、兵庫県立大学の大野暢亮教授と大野研究室学生、神戸大学の陰山聡教授との共同研究でヘッドマウントディスプレイシステム用のLHD可視化ソフトウェア「Digital-LHD」を開発しました。今回、Digital-LHDに関する原著論文が、学術雑誌「Plasma and Fusion Research」に掲載されました。ここでは、当該成果の概要を紹介します。
核融合研では1997年に没入型バーチャルリアリティ(VR)装置「CompleXcope」を導入して以来、VR装置を使った科学的可視化研究を推進してきました。その中で陰山聡教授(当時、核融合研所属)は、VR可視化ソフトウェアVirtual-LHDを開発しました。Virtual-LHDは予め計算したLHD平衡プラズマデータを読み込み、磁力線や圧力等値面、イオンの飛跡を3次元VR空間に表示することができ、磁力線やイオン飛跡の出発点、および圧力等値面を表示する値を対話的に決め、磁力線やイオン飛跡をリアルタイムで計算しながら、流線を表示することができます。このため、表示された複雑な磁力線やイオン飛跡をあらゆる角度から観察できます。また、イオン飛跡ではドップラー効果を含む3次元立体音響効果も付属しています。Virtual-LHDはその後も開発が進められ、LHDのCADデータと統合して可視化したり、ダスト粒子の実験観測データも一緒に可視化したりなど、LHD実験の解析にも役立てられてきました。
しかし、CompleXcopeはその維持費が高額であり、移動させることも不可能であったため、Virtual-LHDの利用は限定的となっていました。他方、先進的なヘッドマウントディスプレイ(HMD)が近年販売され、そのVR体験の質はCompleXcopeと同等です。そこで、Virtual-LHDのHMD版としてDigital-LHDを、大野暢亮教授のグループが中心となって、陰山聡教授、大谷寛明准教授とで開発いたしました。開発プラットフォームもC言語及びOpenGLからC#及びUnityへと変更し、先進的HMDの対話機能を活用しました。また複数のHMDへの移植性のため、OpenXRプラグインを利用しています。
Digital-LHDには次のような可視化機能があります。
- プラズマ圧力の等値面表示
- ポロイダル断面上でのプラズマ圧力値のカラーマップ表示
- 磁力線表示
- 磁力線のポアンカレプロット
- 局所的な矢印表示
- ガイディングセンター近似でのドリフト粒子の軌道表示
- テスト粒子の軌道表示
- ダスト粒子の実験観測データ表示
- 3次元空間内のフライスルー
これらの可視化表示における可視化パラメータ(例:圧力値、ポロイダル断面の位置、磁力線表示や粒子軌道の出発点、矢印表示の場所など)やフライスルーはHMDのコントローラーやジョイスティックで対話的に制御できます。
Digital-LHDを実験研究者に実際に使っていただいて、その使い心地や印象についてポジティブな感想をいただくとともに、ユーザーインターフェースについての課題も頂戴いたしました。今後の開発に活かしていきたいと思います。
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Material from Nobuaki OHNO, Fuko TAKANO, Ami YAMANAKA, Hiroaki OHTANI, Akira KAGEYAMA, Digital-LHD: LHD Visualizer for Head-Mounted Display Systems, Vol.19, 1401029, (2024), with permission from JSPF.
【論文情報】
Plasma and Fusion Research Vol.19, p.1401029(2024年11月10日掲載).
https://doi.org/10.1585/pfr.1401029
題目: Digital-LHD: LHD Visualizer for Head-Mounted Display Systems (Digital-LHD: ヘッドマウントディスプレイシステム用のLHD可視化ソフトウェア)
著者:大野暢亮(兵庫県立大学)、 高野楓子(兵庫県立大学)、山中あみ(兵庫県立大学)、大谷寛明(核融合研)、陰山聡(神戸大学)
お問い合わせ: 可知化センシングユニット 大谷寛明 ohtani.hiroaki(at)nifs.ac.jp