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ムーンショット目標10の新規プロジェクトが始動しました

 ムーンショット型研究開発事業 目標10「2050年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現」における新規研究開発プロジェクト「青紫色半導体レーザーによる慣性核融合モジュールの構築」(プロジェクトマネージャー:株式会社EX-Fusion 森 芳孝氏)が12月15日より始動しました。当該プロジェクトには、本研究所・可知化センシングユニットの上原日和准教授が課題推進者(PI)として参画し、本研究所を中核拠点とした研究開発が推進されます。

ムーンショットプロジェクトのキックオフに際し、開発拠点にプロジェクトのロゴを掲示する森 芳孝PM(左)と上原日和PI(右) (12月16日、本研究所・計測実験棟にて)

 このプロジェクトでは、エネルギー効率に優れた軽量でコンパクトな爆縮用レーザードライバーを実現し、レーザー核融合の早期実現を目指します。フラッシュランプや半導体レーザー(LD)を励起エネルギー源とした固体レーザーをドライバーとするこれまでの固定観念から脱却し、青色半導体レーザー(青色LD)を直接的にドライバー利用することを新たに提案しています。これによって、莫大なエネルギー損失を生じていた、励起エネルギーからレーザー出力への変換過程および波長変換過程を無くし、電気からレーザーへのエネルギー変換効率50%を達成します。しかしながら、これまでの青色LDは、固体レーザーと比較して原理的に大出力化が難しいと考えられてきました。本プロジェクトでは、最先端の技術と英知を結集して、青色LDの大出力化・短パルス化・高ビーム品質化といった技術的なハードルを乗り越え、この崇高な目標に果敢にチャレンジします。

本研究開発プロジェクトのコンセプトの概念図(提供:株式会社EX-Fusion)

 プロジェクトメンバーには、プロジェクトマネージャー(PM)の森 芳孝氏(株式会社EX-Fusion)を統括として、PIに竹内哲也氏(名城大)、宮嶋孝夫氏(名城大)、岩見健太郎氏(東京農工大)、上原日和氏(本研究所・可知化センシングユニット)の4名が選出されました。また、アドバイザーとして天野浩氏(名古屋大)、山本直嗣氏(九州大)が参画します。

 窒化ガリウム系の面発光レーザー(VCSEL)研究の国内第一人者である竹内氏が青紫色VCSELの三次元集積化を担当し、同じく窒化ガリウム系青色LD研究で数多くの先進的成果を挙げている宮嶋氏が、VCSELの短パルス・超短パルス化と大出力電源の開発に取り組みます。また、メタ表面を使ったナノフォトニクスの研究分野で著名な岩見氏が、メタマテリアルレンズによるVCSELアレイの波面制御を、固体レーザー開発や光計測を専門とする上原がマイクロレンズアレイを用いたビーム結合や光伝送技術の開発を担当します。さらに、2年目ステージゲートまでに、上記の要素技術を統合した実証試験を本研究所にて執り行う計画となっています。


 上述の研究チーム結成の経緯としては、昨年度5月に可知化センシングユニットセミナーとして開催した天野浩先生(名古屋大)の講演会(こちらのページ参照)に端を発します。この講演会に先立って、天野先生のほか、竹内氏、宮嶋氏を核融合研に招待し、交流の機会が希少であった青色LD分野と固体レーザー分野、さらには核融合分野との技術交流の可能性について議論しました(こちらのページ参照)。その後も、分野間連携の強化や共同研究提案に向けた活発な議論を継続し、今回の大型プロジェクトへの参画に至りました。

 今回開発に着手する青色LDの大出力化技術は、レーザー核融合での利用にとどまらず、磁場閉じ込め核融合における各種プラズマ計測や、レーザー加工、光無線給電・水中光無線通信など多岐にわたる応用が期待されます。可知化センシングユニットでは、プラズマ計測の高度化のための光源開発研究の一環として当該プロジェクトに取り組むとともに、これを足掛かりとした半導体レーザー分野-固体レーザー分野-核融合科学分野の融合・学際化を加速してまいります。特に、青色LDを含む半導体デバイスの分野では、産・学・官にわたって歴史的に他分野と比較にならないほどの優れた学術知見や技術が数多く蓄積されてきました。これを核融合の分野に積極的に導入することで、新たなアイデアに基づいた革新的成果の創出や新学術分野の創生を目指してまいります。

研究チーム発足のきっかけとなった天野先生、宮嶋先生、竹内先生との技術交流会(昨年5月15日、本研究所・制御室にて)
ムーンショットプロジェクトの開発拠点を視察する森PM(左)と上原PI(右) (12月16日、本研究所・計測実験棟にて)

<関連リンク>

内閣府 ムーンショット目標10 https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub10.html

科学技術振興機構(JST)ムーンショット型研究開発事業 目標10 https://www.jst.go.jp/moonshot/program/goal10/

お問い合わせ: 上原日和(可知化センシングユニット) uehara.hiyori[at]nifs.ac.jp ※[at] を@に直してください。