超高流束協奏材料
Ultrahigh-flux Concerting Materials
  • 超高流束協奏材料とは

     超高流束とは、大量のエネルギーや物質が流れている様子を表しています。核融合、原子力、宇宙、航空、化学プラント等で使用される材料は、極めて大きな熱の流れや、強い粒子ビームに晒されます。そのような過酷な環境でもダメージを受ける一方ではなく、自らの構造を変化させることで超高流束に適応し、協調して音楽を奏でるがごとく、なじむ材料を創ることが研究ユニットのテーマです。

  • ユニットテーマの焦点

     核融合、原子力、宇宙、航空、化学プラント等で使用される材料は複合的な過酷環境にあります。過酷環境では温度、応力、濃度場に急勾配があり、中性子照射下等では照射損傷も加わって超高流束のエネルギーと物質粒子が駆動され、非平衡状態がもたらされます。非平衡状態では非晶質や準安定化合物(準安定相)、そして結晶格子欠陥を含む構成原子集団の自己組織化による準安定周期構造(散逸構造)が見出されています。それらの生成機構と物性への寄与を深く理解し活用すれば、材料自らが安定化して劣化が止まったり、逆にその特性が改善する、いわば適応と呼べる新しい挙動が期待できます。特に、自己組織化がもたらす不均一な、そして多様なメゾスケール構造と、強度等マクロな材料特性との相関の理解は未だ乏しく、大変興味が湧く新領域の課題です。このメゾ構造-マクロ物性相関の理解にもとづき、過酷環境下、非平衡状態でも安定な強化・機能因子を活用し増幅することで、過酷環境に耐える、から適応する材料へのパラダイム転換を図り新材料創製につなげます。一方、完璧な適応は困難と考えるのが現実的であり、環境の揺動や損傷の蓄積・質的変化に適応が追いつかなければ材料特性の劣化が進みます。非平衡状態では、統計集団の複雑性と不安定性に起因する不可逆的な劣化が材料の寿命を決める可能性があります。劣化の可逆性、不可逆性を理解し制御することで長寿命化が可能となり、さらに寿命を正確に見極め最小限の材料でシステムを維持することで経済性と安全性が両立します。

     核融合は全ての過酷環境要素を網羅するので関連工学を先導できる立場にあります。そこで本ユニットでは、材料の適応と寿命を支配する根本法則を究めて体系化し、過酷環境下工学システムを変革する高強度、高機能かつ長寿命材料の創製と寿命予測理論の確立を目指します。

  • 課題の定式化と研究戦略

     超高流束のエネルギー・粒子がもたらす非平衡下において、材料のミクロな構造と、それによって発現するマクロな物性の動態(ダイナミクス)を、原子の集団現象から理解し制御します。注目するのは、材料の製造工程で導入した強化・機能因子の安定性、準安定相の形成、自己組織化構造の発達です。これらに及ぼす温度、応力、濃度場、そして照射の影響を、相乗効果を含めて明らかにするとともに、その機構を理解するためのモデルを構築します。

     過酷環境・非平衡下で生き残る、あるいは新たに生まれる強化・機能因子や、自己組織化による準安定構造を増幅するための材料設計を追究し、適応化を実現します。これらの因子や構造の物理的寿命を支配する基礎機構にもとづき、マクロ物性が工学的要求を下回る、材料としての寿命、そして様々な材料と異材界面で構成されるシステムの寿命を理解し、正確に予測する理論を確立します。

     研究対象とする材料を大きく分類すると構造材料と機能材料となります。構造材料においては、金属材料、セラミック材料ともに対象とします。金属にあっては共有結合性が比較的大きく、セラミック的な高温強度が見込める高融点金属、あるいは鉄鋼であっても高融点セラミックナノ粒子分散強化合金等を中心とします。セラミック材料においては逆に、極細繊維化、金属との接合、複合化によって、擬延性等の金属的な性質を付与した材料が対象です。一方、機能材料としては、絶縁、水素制御、各種センサーに利用できるセラミック材料を対象としますが、金属粒子を注入、分散させる、あるいは過飽和非金属欠損を導入し過剰な金属成分により発現する新たな現象を利用して高機能化を目指します。いわば、セラミック的金属、金属的セラミックというメタな状態にこそ新材料創製の大きな可能性があると私たちは考えています。

  • 論文紹介

    以下では、超高流束協奏材料ユニットの成果として、最近出版した論文を紹介します。

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研究成果

超高流束協奏材料

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